sa.yona.la ヘルプ | タグ一覧 | アカウント登録 | ログイン

sa.yona.la

Reply

Re: http://kgq3vd.sa.yona.la/3

はさみの手

返信

 おいでと手を差し出すと、蟹の子はむっつりと唇をへの字に曲げ、そっぽを向いた。

 何か言ったかしたかと、私はつい悲しそうな表情を浮かべて、蟹の子の顔を覗き込むようにする。蟹の子はますます意固地によそを向き、怒った時にはそうするように、小さなはさみの両手を頭上に振り上げた。

 はさみの先が、顔を近づけていた私の、前髪の先へ軽く当たり、思ったよりもずっと鋭いそのはさみの切っ先で、すぱりと私の髪が切り落とされる。

 驚いて私は身を引き、蟹の子も驚いて両手のはさみを胸の前に抱え込むようにして、私たちは一緒に、そこに落ちた髪のひと房を眺めていた。

 ああ、と思わず私は声を上げ、だがそれは悲しみや悔しさや恐ろしさではなく、単に驚いただけの声だったのだが、蟹の子は両手を抱え込んで小さな体をいっそう縮め、さっきまでよそを向いていた顔をこちらに上目遣いに、心底申し訳なさそうな、そして怯えた顔をしていた。

 大丈夫、と私は髪を切られた辺りの額を片手で押さえながら笑って見せる。蟹の子はそれでも表情を崩さずに、放っておけば泣き出すかもしれないと私は思う。

 髪なんか、すぐに伸びるから。

 できるだけ明るく、私は蟹の子に向かって言った。

 無理はしていない。私のまったくの真正の本音だ。だが蟹の子は信じていない風に、ずりっと後ろへ半歩下がった。

 これはいけない。何を言っても信じてはくれない。私はそう考えて、それがそのまま表情に悲しそうに浮かんでしまい、蟹の子はそれをどう取ったのか、今度こそほんとうに泣き出しそうに、真っ黒いつぶらな目を潤ませて、だから海の水は辛いのだなと、私はよそ事を思う。

 蟹の子を泣かせてはいけないと、私はそればかりで頭の中をいっぱいにして、そうしてひらりと思いついた時には、手の中に大きなはさみを握り締め、その、蟹の子どころか、私の掌の2倍もありそうなはさみで、掌いっぱいにつかみ取った後ろ髪を、じょきりと一気に切り落とした。

 蟹の子は声は上げず、だが意外な表情豊かさで、全身で呆気に取られ、私をあの真っ黒な目をいっぱいに見開いて見つめ、私はそれに応えるように顔いっぱいで笑うと、手の中につかんでいた、私から離れてしまった髪の毛を、後ろの方へぱさりと放った。

 ざくりと切った今は揃わない後ろ髪が、あごの線を撫でて来る。面倒くさい長さになってしまったと私は感じた。

 蟹の子は、呆然とした後で気を取り直し、そしていっそう色濃く悲しげな気持ちをそこへ刷くと、赤い体がなんだかひと色失せたようで、人も顔色を失うが、蟹だって同じように青くなるのだと、それはとても場違いで不思議な発見だった。

 触わると、痛い。

 蟹の子はまだ両手を抱え込んだまま、ようやくぼそりと言った。

 何だって?

 よくわからず私が聞き返すと、蟹の子はうつむいて、ふるふる広いが薄い肩を震わせて、はさみの手では傷つけずに優しくは触われない、と小さな声で言った。

 今度は私が呆気に取られた。

 ああ、そうだったの。

 だから私が近寄ったり、近寄らせたりしようとすると、あんな顔をして見せたのだ。

 蟹の子が私をまた上目遣いに見る。私は蟹の子を見下ろし、微笑んで見せる。私の笑顔を見て、蟹の子はようやく胸の前に組んでいた腕をほどいた。

 蟹の子へ向かって体を近づけると、切ったばかりの中途半端な長さの髪が、ふわふわと顔の回りに散った。その眺めは思った以上に慣れず、顔をしかめかけた私は、思いついたままを蟹の子へ向かって口にしていた。

 髪を切るのを手伝って。

 言いながら、私はまたひと房目の前に垂れた髪の毛を指先につまみ、ぶすりと手にしていたはさみで切り落とす。そしてまた別の次のひと房。

 そうしながら、蟹の子へいっそう頭を近づけて、髪の毛が届くようにしてやると、蟹の子はゆらりと立ち上がり、私の方へはさみの手を伸ばして来た。

 ぱさりぱさり。ばさりばさり。私の髪の毛がどんどん切られてゆく。次第に私たちは愉快になり、笑い転げながら髪を切り続けた。

 垂れる長さが足りなくなると、私は蟹の子を用心深くつまみ上げて肩に乗せ、そこで髪を切るように頼んだ。

 私は、蟹の子から遠い方の髪を盲滅法につまみ上げては切り落とし、最後には私も蟹の子も髪の毛まみれになり、つんつんと逆立った私の髪は長さもてんでばらばらな、ひどいざんぎり頭になった。

 私は、額からうなじまでをひと撫でし、掌に芝生のように当たる髪の意外な柔らかさに目を細め、ありがとう、と蟹の子に言った。

 切った髪はどうする?

 蟹の子が、私の肩から下を見下ろして訊く。

 さあ、持って帰ったら鳥が巣材にするかも。


続きを読む

投稿者 43ntw2 | 返信 (3)

Re: http://kgq3vd.sa.yona.la/3

http://zwuqe8.sa.yona.la/13

返信

何だか表情とか色とか構図とか、いろいろと萌えてしまった。

投稿者 zwuqe8 | 返信 (1)

Re: http://6v4ach.sa.yona.la/265

思いつき

返信

黒も白もごちゃまぜにうpれば、どれが黒歴史かバレなくてよくね?

投稿者 y6p6jr | 返信 (1)

無駄な団結力

返信

まあこの流れを予想ってか期待はしてたんだけどな。>!!~!!!!!!

しかしこんなきれいに続くとは。まさか終わるまで他ネタ投稿控えてたとかじゃないよな?


とりあえずそんなサヨナラーなおまいらに萌えといてやる。発端乙。

投稿者 y6p6jr | 返信 (0)

Re:

!!!!!

返信

投稿者 fj2sp6 | 返信 (0)

Re:

!!!!

返信

投稿者 gm6jrn | 返信 (0)

Re:

!!!

返信

投稿者 x6a7u9 | 返信 (0)

Re:

!!

返信

投稿者 y6p6jr | 返信 (0)

Re: http://q7ny3v.sa.yona.la/1426

ここで

返信

いっきにイメチェンして、ファミリーネームというのはどうでしょうか。「俺、Ya・Za・Wa」的な。

投稿者 g2tw2s | 返信 (0)

Re: http://q7ny3v.sa.yona.la/1423

おまわりさんこっちです、このひとです

返信

すまない、遅めの夏休みもらってちょっと浮かれて晩酌中なんだ…


ひたすら酒飲む&部屋の片づけ、思い出したようにコミ○ィア、程度で終わりそうだけど

投稿者 g2tw2s | 返信 (0)

Re: 佐藤秀峰氏のあれ

ブラよろ 2 線画とスクリーントーン中間調の分離素材

返信

● レイアー状態の素材(フォトショ用 psdファイル) - ダウンロード


 試に作ってみた。 PSDファイルです。 フォトショでもコーレルPPでも開けます。

 透過しているので いろいろできます。 ちょっとした着色もできます。

線画を薄いグレーにしてなぞり描きしたあと、スクリーントーン中間調をぼかして合成する、といった使い方も。


● 元画像 -


投稿者 x3ru9x | 返信 (0)

Re: 佐藤秀峰氏のあれ

ブラよろ 1

返信

 簡単な着色

投稿者 x3ru9x | 返信 (0)

Re: うん

ありがとう

返信

ひとりでもわかってくれた人がいたならそれだけで

投稿者 fyru9x | 返信 (0)

Re: http://fyru9x.sa.yona.la/25

うん

返信

わかります。

投稿者 gm6jrn | 返信 (1)

Re: やられた感が半端ねぇぇぇ ヽ(´∀`)ノ

http://x3ru9x.sa.yona.la/3027

返信

 ども ども、どうもです。

投稿者 x3ru9x | 返信 (0)

Re: 立ち絵の透過

やられた感が半端ねぇぇぇ ヽ(´∀`)ノ

返信

これ、なんて公開処刑ですかw 腹抱えて笑いました。遊び心と制作意欲に感謝です。

最近話題に上がったコレといい、ネタ的なものをサクっと作れてしまうフットワークの軽さがFlashの素敵なところだと思います。


立ち絵の絵描きさん、これ偶然目にしたらビックリっすな。

投稿者 sbifb4 | 返信 (1)

Re: そういうゲームで育った世代

立ち絵の透過

返信

 透過しまーす。



 flash の幅が675pxに縮小されてしまうので、

● 幅700pxの正常サイズはこちら -

● キャラ2(pixiv) -

● あの夏フォント「あんな字を待ってる。R」 ダウンロード場所 - (zigさん提供)

投稿者 x3ru9x | 返信 (1)

Re: 7ヶ月ぶりだな

http://q7ny3v.sa.yona.la/1421

返信

ほほー

投稿者 q7ny3v | 返信 (0)

Re: 文意もしくは補足

化け物

返信

自殺をする人と言うのは、気持ちがまったく平常ではないという意味で、すでに人間ではないのかもしれないですね。

そういう意味では、正しく化け物で、「人でなし」なのかもしれません。

残された人たちにとっては、恐らく辞書的な意味で、自殺成功者たちは人でなしかもしれませんが。


残される人たちがいると言うのが、何しろとても心に重いなと思います。

投稿者 zwuqe8 | 返信 (0)

Re: 綺麗に死ぬ方法

ひとつ目

返信

> ・社会的な死(いなくなっても誰も困らない/誰からも気にされない)

今の自分の状況では、こちらの方が容易な気がします。誰とも物理的に繋がってないと孤独死は現実的ですね。

だからこそ、とりあえず腐乱死体の後始末をさせないように気をつけないとと、非常に現実的に思います(自殺とは限らず)。


> ふつうの人のふりをして生きているひとにとっては

ふり、と言う辺りに、何だかとても言葉にし難い哲学的なものを感じました。

カフカの変身辺りを読み返してみたい気分です。

投稿者 zwuqe8 | 返信 (0)

API | 利用規約 | プライバシーポリシー | お問い合わせ Copyright (C) 2025 HeartRails Inc. All Rights Reserved.