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頭に霞がかかって何も考えられない。

ただ目の前にいる人に向かって、ふらりと体重をかけてぶつかる。

急所目掛けて。


コレガタダシイ


まだ人がたくさんいる。

椅子を振り上げてきた人に、後ろから回り込み一閃させる。

飛び掛ってきたものには右側に回りこみ突き立てる。


マダイル、コワサナキャ


視界が赤くなっても気にはならない。

どうせまだ汚れるから…



ああ、まだあの声が耳から離れない。

真綿で首をしめるようなあの声が。



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呼び出されるといつもの顔。

でも今日は様子が違う。

手招きされると膝枕され、仰向けに寝かされた。


「調子はどうだ?」

「…良くない」


正直に答えないと後が怖い。


「うまく体が反応しない」

「そうか」


頭をひと撫でされると、視界を覆われる。


「少し眠れ、起きたら楽になる」


そう言われて、耳元で「なにか」囁かれた。

何かと聞き取れる暇もなく、深い眠りに引きずり込まれた。



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999.2

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突然現れた廃墟。


始まりの場所。


終わりの場所。


出会いの場所

別れの場所


「結局ここが…」


廃墟に足を踏み入れる。

埃っぽい空気。

散らばる白骨。

ここが放置されて、何年も立っていることが伺える。


「人が入った気配がない…?」



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UTF-8 Decoding & Encoding

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...

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投稿者 v6ktw2 | 返信 (0)

943.1

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荷物の奥から出てきたものは、しばらく触れていないものだった。


「これリュート弾けるの?」


携帯用の弦楽器。

調律すれば、前と変わらぬ音を響かせる。

指もそこそこ動くのでそれなりに弾けるとは思う。


「宿では迷惑だから外に行くか」

「弾いてくれるの?」

「ああ、だから行くぞスフィア、クー」




街の中心にある噴水の縁に座り、準備をする。

噴水の反対側には珍しい東方の踊り子が舞っていて、人だかりができていた。


「とりあえずあちらには負けるが、今日は路銀を集めるためではないからな」


一つかき鳴らし、歌いだす。

情念の歌、送葬歌、郷愁の歌、情熱の恋の歌…

最後に祈り・救いの歌。


散々殺してまわった奴が救いの歌を歌うとは滑稽だな…



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投稿者 ryifb4 | 返信 (0)

251.5

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はたと目が覚めた。

もともと任務中の眠りは浅いので、すぐ頭ははっきりとしてくる。


「…物音?」


なにか木の軋む音がする。

ここは石造りの地下室だ、軋む音は家具からの音しかない。


「なにやってんの…こんな時間に」


ラウドが起きると悪いので、明るいディスプレイを隠しながらボイスレコーダーを起動させる。

音が漏れないようにイヤホンも必須だ。

ワイヤレス集音マイクをそーっと上部の壁の隙間に置いて。


「まったく…」


すこしボリュームを上げると何を話しているか聞こえてきた。


『オッサン、ケ…に……なに……る』

『ひ……ぶりだ……具合は…』


すこし雑音が多いが、ノイズキャンセラでも通せばきれいになるだろう。

報告書を書くために録音しておかねば。


しかしなんか様子が変だ。


「はて…?」


まだ会話が続いているが、どうもリュートの口ぶりから何か嫌がっている様子。

でも片足を骨折している所為なのか、知り合いの所為なのか暴れる気配がない。

嫌がることがあればすぐ攻撃する性格かと思っていたのだが…

暫く様子を伺うことにしてみる。


『へぇ……なに…って…か?』

『うるさい!』


なんか…余裕の無い返事になってる気がするのは気のせいでしょうか。


それにしても似たようなものを何かで…どこかで…

たとえば雑誌とか…マンガとか…小説とか…


「あ。」


パズルが一気に組みあがる感覚。

それと共に今、隣の部屋で何が起こっているか把握してしまった。




「…あわわわわ」


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投稿者 ryifb4 | 返信 (0)

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半分以上紅くなった自分のセカイ。

普段ここは自分しか入ってこれない場所。


そんな場所に足音が聞こえる。


「また来たの?フェイト」

「ああ」


敵意識があると入ることすらできないこの空間。

そこをフェイトはすんなり入ってくる。

リュートですら入ってこれないのに…


「…半分以上紅くなった」

「前よりペースが落ちてるけど範囲が広がっているな」


その所為か知らないけれど、唯一の話し相手。


「リュート、最近自分のこと見てるのかな…」

「どうかしたのか?」

「遠い、リュートが遠い」


一つ不安があった。

自分のセカイにはリュートしかいない。

置いていかれたりしたら一人になってしまう。


「一人はイヤだ…」



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周りでざわざわと物音が聞こえる。

床にびっしりと細かい紋様。

樹脂のランプに照らされて人影がゆらめく。


今から一体何が始まる?


自分は扉を背にして部屋の中心にいる。

黒づくめの人が離れた場所に何人も立っているのが皮膚感覚で判る。



ざわめきが止み、代わりに低い単調な呟きになる。

始まった。


樹脂の匂い、単調なリズム。

意識がゆっくりと眠りに入る感覚に囚われる。

完全に眠ることは無い。

体から力が抜けて、その場に崩れる…


いつのまにか目の前に人が立ったのかも定かではない。


起こされ、座る体勢に直される。


言われるがままに目の前の振り子を目で追う。



すぐに意識が暗転して暗闇に落とされた。



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疲れている、わけではない。

何か欠けていると言ったほうが良さそうだ。


「これでもないのか…」


行きずりの男をひっかけ、後の処理が楽なように橋の袂に連れ込んで。


「しかも…脂っこくてマズイ」


せっかくのメインディッシュの喜びも半減だ。

しかも肝腎なものは脂を齧っているようだった。


汚れを落とすため川の水で洗い流す。

冷たい水が、興奮して熱を持った体に染みる。


何かが足りなくて、空洞が少しずつ広がっていく。

壊れているココロでも空洞ができるのか、と客観的に見ていたりもする。

何が足りないのだろうか?



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耳が痛いほど静まり返っている。

明け方まであと2時間ほどだろう。


「明けない夜は知らないだろ」


やけに饒舌な自分がいる。


「どこまでもどこまでも堕ちるんだ、そしてそれが正常だと思い込む」


気分がいい、これからが楽しみな所為か。


「気がついたときにはもう這い上がれないくらい、深淵で、闇の中」

「狂人め…!」

「その狂気にあてられた気分はどう?」


もう既に相手は自分の手の内。

どうもここでの権力者らしい。

まさか最期にこうなるとは思ってもいなかっただろう。


「もっと狂気に堕ちてみるか?」


わざとゆっくり、儀式めいた動作で近づく。

相手の顔がどんどん恐怖に変わっていくのがおもしろい。

既に空いている穴に手を突っ込み、赤茶色いカタマリを取り出す。


「行儀悪いけど、このままでいただくよ」


待ちに待った瞬間。

口を付けると水分の多い果物のように、ぼたぼたと手の隙間からこぼれる。

口の周りや服が汚れるが一向に構わない。


「ん…すこし脂があるから焼くといいかな」


くどくは無いが舌に脂の感覚がのる、悪くは無い。

そんなことを思い、呟きつつ相手を見やる。

蒼白になり信じられないという顔をしている。


「くくっ、善良なあなた方にはわからないだろうねぇ…真っ暗闇の存在なんて」



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251.4

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「少々お邪魔しますよっと」


自分の胸くらいしかない少女がぱたぱたと動き回る。

ころころと変わる表情。

今までに見たことが無い部類の人。


「……」


不思議な人。

隠れ家に入って「暗いっ!」と言ったきりずっと掃除している。

ここは昔、水牢だとリュートが言ってた。

明るくなるわけがないのに。


「あー、カンテラかランプ…後でいいや」

「……」

「ん?何か聞きたいことある?」


じっと目で追っていたのに気がついたらしい。

声を掛けられた。


「…なんで掃除してるの?」

「しばらくココにいるんだったら、少しでもすごしやすい方がいいじゃない」


今度は、何処かからか毛布を何枚か持ってきて寝床を作り出した。

二人分。


「……なんで?」

「リュートが治るまであなたが体調管理をしっかりしなくてどーすんのよ」

「???」

「今のうち、休息を取るのも仕事よ」


言っている意味がいまいちわからない。

でも慣れないことが多くて、疲れている。


「ほんと、久しぶりに横になって寝れるわ~」


ひっぱられて簡素な寝床に座らされる。

ユイも片方の寝床に寝そべり、あくびをしながら伸びをする。


「私が疲れてるんだから、あなたはそれ以上に疲れているはずよ。じゃおやすみ」


本当に不思議な人。

疲れていることまで見抜かれた。



ほんと不思議な人…



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