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sa.yona.la

301-400

347.2

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リュートに呼ばれた。




起きようとすると、ひっかかる感じ。


「コラ、ぼーっとするなよ」


見上げたリュートに赤い影のようなものが見えた。

しかし、まばたきすると消えてしまった…気のせい?

自分の手を動かし、何も異常がないことを確かめる。


「いくぞ」


不審に思ったのか声を掛けられた。

その背中を追いかける。



夜は寒い。



人に見つからないように、影を選んで進んでいく。

ただ、誰かに見られている気がずーっと離れない。

それは人けが無い場所に出るまで続いた。


「さて、始めるぞ」


つっと背中に緊張が走る。

いつもなら目の前が真っ白になって、リュートの声しか聞こえない。

嫌いで好きなイヤな一瞬。


いつものように……





メリッという音が耳元で響いた。

一瞬遅れて叫ぶ声。

動けない体をおそるおそる見ると……もう一人の自分が自分と中途半端にくっついて……

投稿者 ryifb4 | 返信 (0)

385

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なんてコイツは無防備なんだと時々思う。


「ぐー…Zzz」


人を抱きこんで、夢の中か。

危機感のないやつめ。

今の噂はもっぱら各地で頻発している殺人事件なのにな。


この前の二人組はまだ逃がしたままだ。

隠れ家のあるこの街で、待ち受けてやりあうつもりでいる。

仕返しをしてやらないと腹の虫が収まらない。

…コイツに危害が及ぶのも忍びないしな。


直接、肌からの温もりが伝わってくる。

その温もりに引きずられるように目を閉じた。


ああ…寝ても醒めても悪夢だ…

投稿者 ryifb4 | 返信 (0)

347.4

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「舞え、舞い狂え」


次の瞬間、衝撃に続いて激痛が走り視界が歪む。


何が起こったか解らなかった。

暴走したラウドに真横に吹き飛ばされ、おもいっきり塀に叩きつけられたのだ。

まさかこんなことになるとは思うはずがない、油断した証拠だ。


「っぐ…何が原因だ…」


普段から術でラウドに枷をつけて押さえつけている。

その「枷」を外すのに失敗して暴走したとしか考えられない。

しかしその枷は自分が掛けたものだ、外すのに失敗する理由が無いし、考えられない。



「なーにやってんのよリュート」

「お前らか…」


割り込むように降り立つ二つの影。

いつも余計なちょっかいを掛けてくる二人組か。


「一大事だったら二択」

「俺のモノにキズつけたら承知しない…!」

「りょーかい♪」


軽い返事だったが、目が笑っていない。

その証拠に、きらりと月光を跳ね返した糸は一瞬でラウドの動きを止めた。


「ん~フェイト、やっぱり腕掴んで止めちゃって」

「月唯…すこしは踏ん張れよ」

「リュート~、ぼーっとしてないで早くやっちゃいなさい」


はっ、と我に返ると完全にラウドの動きは封じられていた。

ラウドの力は自分がよく知っている。

それを一分少々で鮮やかに止めたこの二人の力量は計り知れない。



こいつら一体何者だ?

投稿者 ryifb4 | 返信 (0)

369.2

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冷たい手が頭を押さえている。



眠っている頭でもはっきり判る。


その、冷たい手が頭の中に直接入ってくる感触。

気持ち悪くて振り払おうとしても、できなくて。



鏡写しの自分


境界線のごとく深い谷


がくりと崩れ落ちる足元と落下する浮遊感


後ろから誰かに抱きつかれ、呼ばれる声


生暖かい感触



何か舞台や影絵を見ている感じだ。

何度も繰り返し見せられて、冷たい手は離れていった。

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347.75

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ちょーっと刺激が強かっ、た。


「~~~っ」


フェイトに後を任せ…というより押し付けて、屋根の上でひとしきり悶える。

緊急事態でやむをえないのは分かっている。

わかってはいるのだが…


「あう~…」


どうも待ち時間に読んだ本が原因でなかなか頭から離れない。

頭をぽかぽかたたいてみても、一向に離れず。


「うわーん、離れてよ~う」


頭が切り替わるまで、しばし時間を要したのは言うまでもない。


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349

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手応えが浅い。

それでも狙いは正確に思ったとおりの軌跡を描く。


「…変?」


ひゅっという軽い音。

踏み込みが甘く入る。

普段なら体にずんっと衝撃が走るぐらいの勢いがある。


「よくも俺のモノに手を出したな」


相手と対峙しているリュートと背中を合わせる。

思ったより相手が多い。

見える範囲でざっと15人、気配からするともう少し多いかもしれない。


「ここをどういう場だと思っている!」


ほぼ全員、僧兵に扮した傭兵か暗殺者か。

何にしろ油断なら無い。

こっちも隙を見せないよう気配を張り詰める。


「お前達にとっては神聖な場だろうが、こっちには隠れ家にしか見えないね」



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347.6

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荷物をひっくり返し、まじない用の薬を取り出す。

効くか効かないかという薄さの睡眠薬と幻覚剤である。


「う…」


その小瓶を危うく取り落としそうになる。


「ちょっとダメージが大きいんじゃないの?…動かないで」

「何を…」


頭のケガが響く。

そこにユイが触れるか触れないかの位置に手をかざすと、痛みがすっと無くなった。


「ほい、押しても触っても大丈夫」

「!?」

「骨以外は治った、今回は特別ね」


触ってみても痛くは無い、ゆがんだ視界も戻っている。

薬の量を調節しなければならないのでありがたい。



「ラウド、飲めるか?」


起こして薬を飲ませようとするが、苦しげな表情で唸っていて無理と判断する。

しかたなしに、少し流し込みやすいように水に溶かし、舌を噛まれない様に注意して口移しで飲ませる。

苦く甘い奇妙な味が口に広がる。


「んく……げほっ」

「ふう、飲み込んだか」


うまく飲んでくれたようだ、後は薬が効くのを待つだけだ。

幻覚剤が効いてくると、現実と切り離される状態になるので少しは楽になるはず。

苦しんでいる原因は、急にいじられたために起こる体と心の不一致だろう。

こいつの事だ、もしかしたら中途半端に意識同士が混ざり合った可能性が高い。


「…応急処置しかできないな」



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347.5

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突き飛ばされた際に頭を打ってまだふらつく。

しかし暴走したラウドを放っていくわけにもいかない。


「眠り姫よ…」


眠りの術をかけて、おとなしくさせる。

まだ少し辛いのか完全に眠りきらないがその方が好都合だ。


「ここじゃ怪しまれるから宿に運びましょ」

「…わかった」

「じゃユイ、リュート頼む」

「おっけー」


ユイに促され小柄な肩に腕を回すと、つむじ風が吹きふわっと体が浮く。

そのまま、部屋を確保していた宿に文字通り「飛んで」いった。

…偶には役に立つな…こいつら…




「宿取りに行っている間、何があった」

「…周りから『聖女さま』って呼ばれてた少女に『奇跡』を起こされたのよ、止めたんだけど」


そういえば何か最近うわさで聞いたことがある。

不治の病を治す少女が各地に現れているという。

宿で何度もクーの件で勧められてうんざりしていた所だ。


「どう考えても暗示とか催眠術の類っぽくてうさんくさかったけどね!しっかり術の痕跡見えたし」

「ちっ、何かかけられたのか…」


薄々、話から術をかけられたのは気づいた。

ユイの話で決定的だ、自分が使うものとほぼ同じ術の確率が高い。



「…同類?まさか…まだいたのか」



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347.3

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二人がこっそり宿を抜け出したのを確認して、屋根伝いに追いかける。

足場が無い場所は風を足場にして進む。

魔力の羽を出してもいいのだが、いかんせん色が色なので目立つ。


「うーん、なんかありそう」

「なんだよ」

「ちょっと気になることがね」


月唯がこんなことを言う時は大なり小なり何かある。

何年も一緒に任務をこなして来ると、相手の癖も判ってくる。

直感で何かを感じ取るのは月唯の方が上手なので、それなりの心構えはしておく。


開けた道に出ると一度止まる。

街の外壁と倉庫に囲まれた場所はまったく人気が無い。


「今日は倉庫番でも狙うのかしら?」


さらっと物騒なことを言うなよとつっこみたかったが、視線は二人組から離れない。

本来なら止めるべきだが、これも任務だと割り切って見てるだけなのだ。


「ん?」


異変に気づいたのはどちらだったか。


「フェイト!」


飛び出したのはほぼ同時。

リュートが横に吹き飛ばされ、外壁に叩きつけられる一瞬前だった。


「やっぱり昼間のがまずかったなぁ…」


二人の間に割り込むように飛び込む。

吹き飛ばされたリュートは軽い脳震盪を起こしたようだ。


「なーにやってんのよリュート」

「お前らか…」


月唯が手際よくケガの程度を確認して、向き直る。

その間、自分は暴走したラウドをおびき寄せる役だ。

引き離している間、何か話しているのが聞こえた。


「一大事だったら二択」

「俺のモノにキズつけたら承知しない…!」

「りょーかい♪」


…また悪い癖を。

ワイヤーを使う構えに入ったのを視界の隅に捕らえた。

腕を振るのが見えると同時にバックステップで月唯の反対側に離れる。



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369

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呼び出されるといつもの顔。

でも今日は様子が違う。

手招きされると膝枕され、仰向けに寝かされた。


「調子はどうだ?」

「…良くない」


正直に答えないと後が怖い。


「うまく体が反応しない」

「そうか」


頭をひと撫でされると、視界を覆われる。


「少し眠れ、起きたら楽になる」


そう言われて、耳元で「なにか」囁かれた。

何かと聞き取れる暇もなく、深い眠りに引きずり込まれた。



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