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ひどい悪夢だった。
自分のうなされる声で目を覚ますほど。
悪夢の中でされていた行為で、異様に体が熱を帯びている。
「すっげーうなされてたな」
「…、あぁ」
覆いかぶさるように相手が顔を覗き込んでくる。
夢の中で動けなかったのはコイツが上に乗って寝ていた所為らしい。
「何の夢見てたんだ?」
「余計な詮索をするな…うなされたんだから悪い夢だ」
「ふーん、うわごとで『いやだ』って言ってたからな」
それだけうなされていたのか。
…やはり『あの数ヶ月』の記憶は強烈なのか、まだ思い出すと夢に出る……
「よっぽどイヤな夢なんだな」
答えを言いたくなくて、口付けで返す。
早く気を紛らわせたくて、腕を回して抱きつく。
これも悪夢から繋がっているというのに。
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はたと目が覚めた。
もともと任務中の眠りは浅いので、すぐ頭ははっきりとしてくる。
「…物音?」
なにか木の軋む音がする。
ここは石造りの地下室だ、軋む音は家具からの音しかない。
「なにやってんの…こんな時間に」
ラウドが起きると悪いので、明るいディスプレイを隠しながらボイスレコーダーを起動させる。
音が漏れないようにイヤホンも必須だ。
ワイヤレス集音マイクをそーっと上部の壁の隙間に置いて。
「まったく…」
すこしボリュームを上げると何を話しているか聞こえてきた。
『オッサン、ケ…に……なに……る』
『ひ……ぶりだ……具合は…』
すこし雑音が多いが、ノイズキャンセラでも通せばきれいになるだろう。
報告書を書くために録音しておかねば。
しかしなんか様子が変だ。
「はて…?」
まだ会話が続いているが、どうもリュートの口ぶりから何か嫌がっている様子。
でも片足を骨折している所為なのか、知り合いの所為なのか暴れる気配がない。
嫌がることがあればすぐ攻撃する性格かと思っていたのだが…
暫く様子を伺うことにしてみる。
『へぇ……なに…って…か?』
『うるさい!』
なんか…余裕の無い返事になってる気がするのは気のせいでしょうか。
それにしても似たようなものを何かで…どこかで…
たとえば雑誌とか…マンガとか…小説とか…
「あ。」
パズルが一気に組みあがる感覚。
それと共に今、隣の部屋で何が起こっているか把握してしまった。
「…あわわわわ」
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「少々お邪魔しますよっと」
自分の胸くらいしかない少女がぱたぱたと動き回る。
ころころと変わる表情。
今までに見たことが無い部類の人。
「……」
不思議な人。
隠れ家に入って「暗いっ!」と言ったきりずっと掃除している。
ここは昔、水牢だとリュートが言ってた。
明るくなるわけがないのに。
「あー、カンテラかランプ…後でいいや」
「……」
「ん?何か聞きたいことある?」
じっと目で追っていたのに気がついたらしい。
声を掛けられた。
「…なんで掃除してるの?」
「しばらくココにいるんだったら、少しでもすごしやすい方がいいじゃない」
今度は、何処かからか毛布を何枚か持ってきて寝床を作り出した。
二人分。
「……なんで?」
「リュートが治るまであなたが体調管理をしっかりしなくてどーすんのよ」
「???」
「今のうち、休息を取るのも仕事よ」
言っている意味がいまいちわからない。
でも慣れないことが多くて、疲れている。
「ほんと、久しぶりに横になって寝れるわ~」
ひっぱられて簡素な寝床に座らされる。
ユイも片方の寝床に寝そべり、あくびをしながら伸びをする。
「私が疲れてるんだから、あなたはそれ以上に疲れているはずよ。じゃおやすみ」
本当に不思議な人。
疲れていることまで見抜かれた。
ほんと不思議な人…