823.3 |
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本線 801-900 |
「反対、制御がきかないに一票」
「…そこまで話がわからないやつではないと思うが」
飛び込むまでは決まったが、ここにきてからひと悶着が起こる。
何を隠そうラウドの扱い。
忍び込むまでの時間稼ぎに暴れてもらおうかと思ったが、どうもリュートの事しか聞かないフシもある。
「騒ぎを屋敷の敷地内で収められるなら戦力だけど…暴走したら救出どころの話じゃなくなります」
「暴走する前に助け出せばいいだけの話だろ、後はリュートに任せれば収まる」
お互い一歩も譲らず。
万が一のこともあるが、位置を掴んでいる分ステルスで姿を消せるこちらが有利でもある。
そんな二人に割って入ったのは…
「本人に聞けば一番いいであろう?話が解らぬ相手でもあるまい」
パンドラだ、思ったより分析していたらしい。
「今までの行動から考えて、ラウドが言うことを聞くのはリュートしかいないと思ったのだが、最近変わったの」
「変わったかしら?荒れてたけどそれが落ち着いたくらいにしか見えないんだけど」
「そういえばこの前の満月以降から比較的おとなしいな」
「そのもっと前からだ、攻撃の仕方が変わってきた辺りからかの?」
攻撃の仕方…ものすごく思い当たる。たしかに教えた。
「気にかけてる事が伝わったのではないか?」
「いや…同じ匂いを嗅ぎ取ったんだろ」
772 |
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本線 701-800 |
「反応はいいけど、受身だな。反撃型なのか」
その気はないと思っていた。
しかし、さんざん攻撃を受け流した相手の言葉だ、そういう戦い方が染み付いたのだろう。
「勢いはいいから、そのまま一瞬で近づいて一撃が出せればなぁ…こんな風に」
言い終わらないうちに一瞬で間合いを詰められ、軽くわき腹に拳を当てられる。
「今のは寸止めしたから何も無いが、良くて気絶、悪くて内臓にダメージ与えて吹っ飛ばせる」
これが実戦なら命は無いということか。
つくづく細かいところを的確に突いてくる。
「あともう一つ、斬るだけじゃなくて突くのも覚えろ」
「突くのは今までもやっている」
「あー…気づいてないと思うが、うまく飛び込んできても斬りつけてくるから避けるスキが出てくるんだ」
言われてみれば、軽く動いて確認すると殆どが斬る動きだった。
突く動きがまったくと言っていいほど無かった。
そんなところまで見ていたのか…
943.4 |
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本線 901-1000 |
鳴り止まない拍手とともに、どこからともなくコインが投げ込まれる。
予想しないわけではなかったので、スフィアを手招きしてすこしスカートを貸してもらい集めてもらう。
「お嬢ちゃんこっちも」
「はーい」
ぱたぱたと愛らしく集めて回るスフィア。
見物客へお礼も忘れてはいない。
ふと思ったことはひとまず頭の片隅に追いやった。
「枚数をきちんと数えてから、半分に分けてくれないか?」
「うん、やってみる」
楽器を片付けながら様子を見守る。
すこし多いようで、ユイに手伝ってもらいながらも何とか数えきったようだ。
「というわけで先に戻るから、あの二人に渡しておいてくれ」
「ちょいとお兄さん、なんで私に頼むかしら」
「…あまり顔を覚えられたくないんだよ、あと受け取りを断られても困るしな」
断る時に居なければ受け取らざるおえないからな。
今までも何回かやっている。
555 |
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本線 501-600 |
予想外の頼まれごと。
それは…
「…子供ってどうやって扱えばいい?」
お兄さん、ぶっちゃけ慣れです。実学です。
まぁ、今までの調べでリュートは普通の育ち方してないので知らないのも当然か。
「何を考えているのかさっぱり解らん…」
「あのくらいの子供なら、興味があると何でもついて行っちゃうから目は離さないほうがいいわよ」
「むぅ…」
よっぽど慣れてないのか、ストレスになっているようだ。
…クーはストレスにならないのね。
「あとは、怪我しない程度に見守るのとマナーを教えるってくらいかしら」
「…めんどくさいな」
「あまり怒らないのもコツね。根気が必要よ~」
いい隠れ蓑ができてよかったじゃない、と囁くと苦虫を噛み潰したような顔をした。
「ま、夜に出かけるときはあの子の面倒くらい見てあげてもいいわよ」
そのつもりで質問してきたんでしょうがと少々意地悪な笑みで返してみた。
リュートがパンドラのことを子供と勘違いするのも無理はナイ。
こっちも大義名分ができて、常時張りつけるなと算段をめぐらせていた。
情報革命バブルの崩壊 (文春新書) (新書) 山本一郎 著 |
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本 |
-目次-
まえがき 「無料文化」を支える過剰期待というバブル
第2章 ネット空間はいつから貧民の楽園に成り下がってしまったのか?―「理想郷」ネット社会の荒れ放題
第3章 情報革命バブルとマネーゲームの甘い関係―一罰百戒の「一罰」はなぜ堀江氏だったのか
第4章 ソフトバンクモバイル(SBM)で考える時価総額経営の終焉―崖っぷちの天才・孫正義氏による「価格破壊」
第5章 「ネットの中位性」とネット「無料文化」の見直し―ネット界隈が一般社会の秩序の枠組みに取戻される時
あとがき リーマン破錠、そして宴は終わる
http://www.amazon.co.jp/gp/product/toc/4166606670/ref=dp_toc?ie=UTF8&n=465392
・ ・ ・・・・ ----∞∞※∞∞---- ・・・・ ・ ・
切り込み隊長の本。
面白そう。買おうかな。
>情報革命バブルとマネーゲームの甘い関係―一罰百戒の「一罰」はなぜ堀江氏だったのか
>リーマン破錠、そして宴は終わる
ちょっと目次から想像できること。
堀江氏のバックについてたのがリーマンだったからな。
リーマンが堀江氏をパペット人形のように操って資金を与えていた。
で、日本のITブームを煽って盛り上げていた 影の立役者であるところのリーマンが破綻した今
日本のITやインターネット業界はどうゆう状況にあるのか.....。
ひっとしたら、屋根に上らされた後 はしごをおもいっきり外されているのかもしれない。
どっちに転がるかわからないギャンブル性が非常に高い状況に今あって恐ろしい状況になっている、ってのが
本当の姿であると。
んー、いやほんと それは十分に考えられるよ。
『ミクシィの株は高い? 安い? 企業価値で考える (1/2)』 2009年01月06日 の記事。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0901/06/news017.html
ミクシィの時価総額1500億円は、どのような成長を織り込んでいるのだろうか。
「1500億円は利益率が変わらず、年間約50%増のペースで、今後5年間売上が成長するとした場合の
株主価値に一致する」。ミクシィの対前年成長率は92%だが、電通総研によると広告市場全体における
インターネットの広告の割合は6%に達していることや、mixiのPVが2位であることを考えると「現状の
ビジネスモデルの成長だけでは50%の成長が5年も続くのは難しいかもしれない」と分析する。
これからどっちに転がるのか...........わからないぞこれは。
ミクシィだけじゃない。あらゆるところが疑わしい。
金融危機は続いているし不景気風の突風は吹いている。
0.84 |
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本線 0-200 |
訓練を終えて休むためだけの部屋に戻される。
明かりが一つしかなく、窓も無い暗い部屋。
だから少しでも空気がヘンなことに気がつく。
「だれかいる?」
「シッ」
鍵を掛けられたドアの死角にしゃがんでいる人影。
足音が遠ざかるとほっとしたようだった。
口元に当てている指がやけに細い。
自分の手と比べても細い。
「…え……あの師匠、何考えてんだ」
こっちも見えた顔に驚いた。
大人達はすべて顔を隠しているため、あまり記憶に残らない。
シアイでやるときも顔を隠してやるから個々としての感覚が薄い。
もしかしたら初めて人の顔を見たかもしれない。
「だれ?」
「お前こそ、いつからココにいた」
「しらない。ここしか知らない」
「…そうか」
かすかに上の階の足音が急ぎ足が増えたように感じられる。
迷い込んだ人は何かにおびえたように俯いてしまった。
「どうしてここにいるの?」
「…イヤになったから隠れてる…」
そういえば大人達が言っていた、「ここからは逃げられない」と。
「…解っている…わかっているんだよ!!」
拳を床に叩きつけて叫んだ後、何か頬を水のようなものが伝っていった。
ふっと興味が沸いて指先を伸ばしてすくい取り、舐めてみる。
「しょっぱい…水かと思った」
「…お前」
「いつもは短剣で刺すと赤い水しかでてこないんだけどなぁ」
ふつふつと疑問が湧き上がって押さえきれなくなる。
どうやったらしょっぱい水が出てくるのだろう。
「なんでだろう?」
気がつけば相手の首に手をかけ、締め上げていた。
754 |
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本線 701-800 |
「少しくらいなら相手してやってもいいぞ」
どこにも吐き出せない思いをそのまま攻撃に乗せて。
しかし洒落にならないスピードで返される。
何度繰り返しただろうか?
半分以上赤くなったセカイで二人っきりでの一方的な殺し合い。
何度返されても収まりがつかなくて、また感情のまま襲い掛かって。
「癇癪を起こした子供…いや、認められたいだけの子供って感じだ」
今度は短剣を持った手をつかまれ、勢い良く叩きつけられる。
予想以上の衝撃に息ができない。
「ぐっ……げほっ…っ!」
「気が済んだか?」
呼吸が落ち着くと、荒れていた気持ちが無くなっていた。
溜まっていたものが消えてしまったようだった。
「お前の攻撃、思ったよりパターンが単純で避けやすかったぞ」
「…そっちこそ、勝てる気がしない」
強い、間違いなく強い。
フェイト相手に太刀打ちできないとは思わなかった。
「ただの経験の差だ」
起こそうと手を差し伸べてくる相手。
その手を取って起き上がるフリをする。
油断しているところを起き上がったときの勢いだけで刺すつもりだった。
ふわりと足が浮く感覚。
「ま、俺の場合は力の差も間違いなくあるから気をつけろよ」
片腕で空中に投げ出されたと気がついたときには、もう遅い。
体勢が立て直せず、また容赦なく叩きつけられた。
804 |
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本線 801-900 |
落ち着いてみると、やはり周りが見えてくるものだ。
そうすると前とは違うものが見えてくる。
たとえば、今やりあっていた暗殺者と術士は明らかに自分達を狙っていた事。
4人いたのだが、一人逃がしたのでラウドを追わせている。
「火消しに動いてるのか、邪魔なのか…両方かもしれないな」
たとえば、ユイとフェイトが予想以上に使える存在だったこと。
今も人払いの術をかけて人の目を完全に避けている。
その他にも子守や怪我の治療など小さなことから、逃走経路の確保まで何でもやってのける。
ただ油断していると、ユイに弱みを握られてしまうのが怖いところだ…
一番目に付いた変化はラウドの戦い方だ。
受身型の攻撃が一変していた。
素早く、鋭い一撃が相手を一瞬で倒した時は戦慄が走った。
それと同時に頼もしくも感じた。
少し、自分が弱くなったのかと錯覚するくらいに。
347.4 |
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本線 301-400 |
「舞え、舞い狂え」
次の瞬間、衝撃に続いて激痛が走り視界が歪む。
何が起こったか解らなかった。
暴走したラウドに真横に吹き飛ばされ、おもいっきり塀に叩きつけられたのだ。
まさかこんなことになるとは思うはずがない、油断した証拠だ。
「っぐ…何が原因だ…」
普段から術でラウドに枷をつけて押さえつけている。
その「枷」を外すのに失敗して暴走したとしか考えられない。
しかしその枷は自分が掛けたものだ、外すのに失敗する理由が無いし、考えられない。
「なーにやってんのよリュート」
「お前らか…」
割り込むように降り立つ二つの影。
いつも余計なちょっかいを掛けてくる二人組か。
「一大事だったら二択」
「俺のモノにキズつけたら承知しない…!」
「りょーかい♪」
軽い返事だったが、目が笑っていない。
その証拠に、きらりと月光を跳ね返した糸は一瞬でラウドの動きを止めた。
「ん~フェイト、やっぱり腕掴んで止めちゃって」
「月唯…すこしは踏ん張れよ」
「リュート~、ぼーっとしてないで早くやっちゃいなさい」
はっ、と我に返ると完全にラウドの動きは封じられていた。
ラウドの力は自分がよく知っている。
それを一分少々で鮮やかに止めたこの二人の力量は計り知れない。
こいつら一体何者だ?
823.2 |
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本線 801-900 |
「ちょっとお兄さん、おつかい頼まれてくんない?」
本に偽装させた端末を弄っていた月唯に声を掛けられる。
最近、リュートが出かける間の子守中はいつも弄っているのだ。
「買い物だったら自分で行けよ…」
「残念ながら、お買い物ではありませんのよ」
手招きされて覗き込んだ端末には注意のアラートが点滅していた。
戦闘任務の作戦に使うフィールドマップを応用して、買い物に出たリュートを追いかけていたらしい。
「…いつのまに仕掛けた?」
「行水中にこっそりとマントに仕込みました」
そういえば、「野暮用だ」と言って出かけてかれこれ一時間半は過ぎた。
「30分前からぴたりと動かないのよねぇ…列ならじりじり動くはずなのに」
「だから行って来いと」
「そーゆうこと」
ステルスをかけてから窓を飛び出す。
やはり市場のような混雑した場所で探す場合は上から探した方がいい。
しかし、月唯から指定された所は市場から離れた場所だった。
「何があると言われれば…公園、民家、宗教施設…人気無いな」
『うーわー、やられた。絶対捕まってる、見た目より抜けてるから』
「まだそうと決まったわけじゃないだろ、近くまでナビしろ」
文句を言いながら反応がある場所まで屋根伝いに飛んでいく。
反応が一番近くなったところで足を止めた。
「そこそこ広い…商人系の家か」
『フェイト、その家の高さどのくらい?』
「二階建てだ、5mって所だろう」
『…なんで10mも…地下室かぁ』
外から見ても手伝い以外の気配はない。
ただ、屋根から玄関を覗き込むと人の出入りはひっきりなしに続いている。
「くさいな、やっぱり」
『理由は何にしろ、飛び込みますか』
「今の時間は人が多すぎて騒ぎになる、深夜か朝方だな」
「難易度が高い」 = 「難しい」 ? |
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日本語 わりとどうでもいいこと |
多分そういうことを表しているんだろうなとは思う。
少なくとも、自分が見聞きする範囲ではそのように使われているようだ。
気持ちはわかるがなんとなく釈然としない。
「難度」が高ければ難しい、ってのはわかる。例えば体操なんかでは「E難度」のような言い方をする。
印刷や写真なんかで「明度が高い」と言えば、まあ、要は白っぽいってことでしょう。
例えば、聞いたことないけどもし「明暗度が高い」と聞いたら、明るいってことよりもコントラストというか何か対比のような状況を連想するんじゃないか。
のようなことを知人と話していたら「パワーが要る物を先に言ってるだけのではないか」という意見があった。
曰く、例えば「明暗」なら一般的には明るい状態の方がエネルギーが要る。
「遠近」ならそこに行くまでのエネルギー。そもそも「高低」も。
かたっぽだけ言うような時は、より要る方だけ言えば事足りるからではないか。温度や湿度だって「温冷度」「湿乾度」とはあまり言わないではないか。
と。
でも高いことが即すごいことばっかりでもないと思う。
道具なんかは一般的に使い方の「難易度が低い」ほうがえらいしなあ。
なぜ難易度だけ、高いと即「難しい」んだ。
それに、今までそこに疑問を抱かなかったのはなぜだ。初めて聞いた時から「難しい」とすんなり受け止められたというか、思わなかったら違和感を覚えたはずだ。忘れてるだけなのかな。文脈もあるだろうし。
さらに今思いついて打ってみたら「乾湿度」なら一発変換だぞ。乾湿度が高い、は乾いてるのか湿気ってるのか。
結局、その時は自分も知人も他のいい例を思いつけず、その話はお開き。
疑問に思うこと |
返信 |
世間話 日本人 |
自転車を7月に買ってから1人で色んな場所に行くようになった。
鎌倉はちょくちょく行くし、一番遠いところで山梨まで。
なんだかんだで3ヶ月ちょいで1500km走った。
そーいう事を他人に話すと必ず聞かれるのが
「1人で?」という質問。
「そーだよ1人だよ」と返答すると、「寂しい奴」とか
「他の人いないの?」と言う。
この問いかけの意味がよく分からない。
一人で自転車旅行すると寂しい奴なのか?
個人的な部分で聞いたことも無いので分からないが
こういう問いかけをしてくる人は一人旅の経験が無いのでは?
と思う。1人だから楽しめることを知らないだろうから聞いてくるのだ。
知らない土地での不安感、同時に高まる感受性や期待感
(複数人のそれよりもかなり強い…
知人と居る=身近な環境が残っているという事だと思っているけど。)
そういったものに触れ合えた時の気持ちの昂ぶりは
1人じゃなきゃ味わえないものがある。
俺はそういったものが好きだし、他人に気を使いながら行動するのが
すんごい下手だから1人旅をよく選ぶんだけどなぁ。
(現地の人と話すのは、そんなに嫌いじゃないw)
偶然にもうちの同期には1人旅が「寂しい奴」観点からみた<変な奴>が多い。
1人で京都旅行にしょっちゅう行く奴。仕事やめたと思ったら「地平線が見たい」
とか言って北海道旅行に1人旅する女の子。
はたして、本当に変なのだろうか?寂しい奴なのだろうか?
801.3 |
返信 |
本線 801-900 |
冷静になってみると…まずいことをした。
極力、ラウドの前では見せないようにしていたのだが。
「っは…」
頭から冷たい水を被り、気分を鎮めようとする。
しかし、そんなことで治まるものでは無くなっていた。
気を抜くとふいっと意識を持っていかれる。
「おい、風邪引くぞ」
声がして、またぼーっとしていたことに気がつく。
相手の顔が満月の陰になりよく見えない。
「おい、聞こえているのか?」
「え、ああ…」
満月というものは狂わせる力があるというが…本当なのだろうか。
銀髪の相手は視線が自分に向いてないことに気がつき、振り返って満月を見上げる。
「…すっかり忘れてたな」
「何を…」
「こっちの話。お前の不調の原因に心当たりがあるだけ」
急に風が吹き、濡れた体から体温が急激に奪われる。
それと同時に一気に思考が覚めた。
「………頼むから、ある程度の不調は言ってくんねぇかな」
普段の態度から想像できないルビーの輝き。
「こっちは仕事なんでな」
熱が一気に収まり、酔いが醒める感覚。
それとほぼ同時に風が止む。
「治まっ…た?!」
「いや、応急処置だ。短くて二時間くらいしか持たない」
例えるならバケツの容量を一時的に増やしただけだとフェイトは軽く説明した。
濡れた髪はそのままで宿へ戻る。
当然表も裏も開いてないので、窓から進入する。
「ったく…少しは考えろ」
「先が残り少ないヤツに言って何になる」
「誰が後先の事と言った」
何を言いたいのか分かっている。