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耳が痛いほど静まり返っている。
明け方まであと2時間ほどだろう。
「明けない夜は知らないだろ」
やけに饒舌な自分がいる。
「どこまでもどこまでも堕ちるんだ、そしてそれが正常だと思い込む」
気分がいい、これからが楽しみな所為か。
「気がついたときにはもう這い上がれないくらい、深淵で、闇の中」
「狂人め…!」
「その狂気にあてられた気分はどう?」
もう既に相手は自分の手の内。
どうもここでの権力者らしい。
まさか最期にこうなるとは思ってもいなかっただろう。
「もっと狂気に堕ちてみるか?」
わざとゆっくり、儀式めいた動作で近づく。
相手の顔がどんどん恐怖に変わっていくのがおもしろい。
既に空いている穴に手を突っ込み、赤茶色いカタマリを取り出す。
「行儀悪いけど、このままでいただくよ」
待ちに待った瞬間。
口を付けると水分の多い果物のように、ぼたぼたと手の隙間からこぼれる。
口の周りや服が汚れるが一向に構わない。
「ん…すこし脂があるから焼くといいかな」
くどくは無いが舌に脂の感覚がのる、悪くは無い。
そんなことを思い、呟きつつ相手を見やる。
蒼白になり信じられないという顔をしている。
「くくっ、善良なあなた方にはわからないだろうねぇ…真っ暗闇の存在なんて」